SHOCK2019とドリボ

SHOCK帝劇とドリボとSHOCK梅芸の感想をまとめて書こうとしています。力技がひどい。
そうこうしているうちにSHOCK2020帝劇の制作発表まで終わってしまいました!遅刻遅刻大遅刻~

SHOCKは帝劇、梅芸で毎年どちらも観たいなとは思っていて、今年のドリボは岸くんと神宮寺くんのWユウタ主演なので観たくて。ラッキーなことに全部一回ずつですが観ることができました。これで今年の運は使い果たした。

■ドリボ
ドリボは完全に初見で、去年までがキスマイだったとか、鉛の板とか、キーワードは知っていたものの、全容は把握できていないままでした。普通にWユウタ主演というだけでも楽しみなのに、演技指導にこーさまが入ることになり、脚本も手直ししたと言っていて、ますます楽しみになりました。

毎年出演者に合わせて設定が変わるのだけれど、話の筋を整えることに重きを置かないヒロムのおかげでストーリーは破綻していたらしい(by こーさま)。起承転結がしっかりしていてわかりやすいという評価もあり、なぜ起承転結のあるストーリーがわかりにくくなり破綻するのか…とザワザワしつつも、ジャニフワ*1を見たときにも「言いたいことも見せたいものもよく分かるが分からん!」と思ったので、なんとなく想像はつきます。
具体的にどのように手を加えたかは日経エンタ11月号の連載に書いてくださっています。ありがたや〜。9月公演の台本が7月時点で第1稿止まりだったのなかなかのヤバさ…。しかも出演者たちは夏休みの予定がたんまりあるJr.たち&全国ツアー中のキンプリ。これらの案件、ヒロムが全部プロデュースする予定だったの??そして滝沢社長が全部引き継ぐ予定だったの???恐ろしや…。これまでどんな進め方をしてきたのか超気になります。

私はSHOCKはEndless SHOCKになってからしか観てないし、その他のヒロム案件って大阪のジャニフワしか多分観てないので、ヒロム舞台への理解が乏しい前提で読んでくださいね。

今回観たドリボは、基本的に話の筋も登場人物のキャラクターもわかるし、フライングやアクロバットのショー要素、歌もダンスも楽しめました。ちゃんとミュージカルでした。
ユウタ/チャンプ/ユウト、マダム/リカの設定は例年そんなに変わってないはず。
台本の第1稿がどんな内容だったかはわからないけれど、こーさまが台本に手を入れた際に重視したのが「なぜこれをするのか」が伝わるように、ということでした。ヒロムはそういうところは全然気にせず、とにかく見せたいものをやる!って構成にするけど、こーさまはそれだと腹落ちしてやれないから、ちゃんとシーンの繋がりを作ろうとする。例えば、壁フライングにヘリコプターの音を入れることによって、ビルの屋上を飛び移って逃げているシーンであるように見せる。いや、それでも壁フライングは十分に唐突な演出なんだけど、ヘリコプターの音だけで観客も役者も納得して舞台上の芝居に集中させることが出来たのは大発明だと思う。
そう。私は芝居に集中させて欲しい。ツッコミを入れる隙を与えて欲しくない。「わけわかんないけど凄かったね」より「凄かったね」と素直に言いたい。あのシーンの意図は…とこちら側で想像できればいいんだけど、出来ないこともあるから、なるべく分かるようにしておいてもらえると助かる。
ボクシングの練習だと言ってるのにダンスするとか、そういうミュージカル文法は受け流せちゃうから、身勝手な意見なのは承知の上なのだけど。

岸くんに演技力があるのは最初からわかっているので何も心配してなかったんだけど、岸くんばっかり贔屓しちゃってゴメンね!となるくらい神宮寺くんも良かったです。自分との試合を放棄して勝ちを譲ったユウタに対して「怒り」ではなく「苛立ち」が表現されてた。ボクシングが怒りから生まれる暴力にもなりかねないところを、ちゃんと試合としてユウタと対峙できてた。それは神宮寺さんが元から持ってる紳士性によるものかもしれないけど、性質にあった役柄が与えられたのも大正解。あと、歌も台詞の強さも良かったです。

ゆうぴ(ユウト)も器用な人だし、去年に引き続きの弟役で余裕もあるしで、全く心配せずに見れました。ユウタがギターを弾くシーンはたぶん毎回アドリブで、私が見た回はチューニングが狂ってるよとか言ってたんだけど、アドリブだとわからない自然さだったし、受ける岸くんも自然に素で受け答えしちゃえるので、自然に見れた。アドリブで笑わせてやろうとか、そういう意気込みを感じないところが好印象。
大昇くんは事前に歌が上手いことは把握していたので安心して聴けたのですが、前髪が目にかぶってるからか表情が分かりづらくて、勿体ないなーと思いました。もっと印象づけられる役柄のはず。同じことを他のJr.たちにも思って、個性が見えづらいのが勿体ない。出演者が多いから仕方ないんだけど。ハイハイは、橋本くんと作間くんが休演してから観に行ったので3人でした。2人がいた時にどんな役割分担になっていたのかは分からないのだけど、ゆうぴ(ユウタの弟)、ガリさん(リカさんを素直に受け入れられない)、みじゅき(素直に受け入れる)とキャラの違いがハッキリしていた分、ガリさんみじゅきのドリボ内での重要度が高く感じました。
でもハイ美侍はサマステとかドームとかやりつつドリボもで本当にすごいねぇ。

ちゃんとした流れはもう覚えていないんだけど、壁フライングと岸角が2幕の中盤で、このあたりにアクロバティックなパフォーマンスを入れたい気持ちはわかるけれど、普通のミュージカルパートとのテンションの差を感じました。なんかもっとシームレスな導入方法はないかなぁ…。
最後にみんながスタオベしちゃう曲があるんだけど、その後に幕の前で4人(?)で映像をバックに歌いだすから、なんか変な感じ。幕を下ろして裏で転換作業をする時間を稼ぎたいのはわかる。でも、一旦カンパニー全員でドーンと盛り上げた後に、ステージの手前ぎりぎりの狭いスペースでちまっと4人で歌うのは落差が激しすぎる気がする。うーん。
トニセンの「カノトイハナサガモノラ」も3人が客席を通って外に出てステージに戻るまでの間に映像が流れるんだけど、その繋ぎはわりと自然で違和感なかったんだよね。
ROTで、「ショータイムはファンサービスだから、やらないという選択肢もあるけどどうする?」とこーさまがWゆうたに質問するシーンがあったんだけど、ショータイムというのはちまっと4人で歌った後に幕を上げてやったパートのことなんだろうか。それなら絶対絶対やって良かった!あれ、宝塚で言うところのフィナーレだと思うので、ハッピーに観劇を終えるには必要なキラキラパートだった。あれ、別に「ドリボには興味なくてアイドルのステージが見たいだけの人」のためのパフォーマンスじゃなかったから、全然違和感なかったなー。繋ぎは違和感あったけど。

これまでのヒロム演出をどこまで残したのか、どう手を入れたのかをわかっていないし、こーさま自身も時間が無かったと言っているので(JUMPコン演出とSHOCK梅芸演出/主演を同時に掛け持ちしていて尋常ではない)、これからどうなっていくのかが楽しみです。いや、こーさまは今回だけ!って思ってるかもしれないけれど。いやいやいや…。

■SHOCK

  • 2019年

2〜3月帝劇、9月梅芸
リカ:梅田彩佳ちゃん
オーナー:前田美波里さん
<帝劇>ライバル:内、松松のえ(トラジャ)、福田越岡→福田松崎(ふぉゆ※越岡怪我のため代役)、寺西
<梅芸>ライバル:優馬、松松のえ(トラジャ)、福田松崎辰巳(ふぉゆ)

去年との変更点、本当に大なり小なりいろいろ変わってるはずなんだけど、ざっくり言うと「わかりやすくなった」。
一番感じたのは2幕最初のシェークスピアのシーン。元ネタを知らなくてもシェークスピアなんだろうなということは分かるし、コウイチが次はシェークスピアやりたいって言ってたこととリンクしてるんだろうなということも分かるものの、1幕最後に大流血しながら階段から落ちてその後どうなった?!となっている客席を置き去りにしかねなかったシェークスピアが、ちゃんとライバルの苦悩として分かりやすくなってた。いや、今までだって分かってたはずなんだけど、なんだろうこの違い。
冬に帝劇で観て「分かりやすくした!」と感じたときには、観客に期待する理解レベルを下げられたような屈辱感があったのだけど(めんどくさい観客)、ドリボを経て梅芸で改めて観たことで、この「分かりやすさ」は作品を観客に届けるための誠意であり、演者にとっての演じやすさにも繋がるのだなと納得できました。ありがとうこーさま。ありがとうドリボ。
もう台詞は完全に忘れたのですが(すぐに感想を書かないから)、コウイチがニヤッとするところが超怖くてよかったです。

今年はナイツテイルを経てのSHOCKということでどんな変化があるかなと期待していたのですが、大きな変化としては「オーケストラピット」がありましたね。思い出しました。
これまでは舞台袖の柱の中で演奏していたのが、正規のオケピ位置で演奏するようになりました。これまではフライングに必要な足場をオケピを潰して確保していたので、いろいろ物理的に難題だったそうです。
ミュージカルでオケピ生演奏はそれほど珍しくないのですが(逆にそのためのオーケストラピット)、SHOCKにオケピを導入したのは、ミュージカルとしての完成度を高めたかったのかなと感じました。ヒロムの作る舞台はショー要素が強すぎるように思うけれど、こーさまが演出を担当するEndless SHOCKは年々ミュージカルになっている気がします。

リカ役の梅ちゃんについて、梅芸パンフで「梅田さんは、オンステージのシーンでの見せ方を知っている人」とこーさまが語っていました。元AKB48ということで、もちろん舞台経験も数々あるれっきとした舞台女優さんではあるけれど、アイドル経験ゆえかやっぱり魅せる能力が高いな!と感じました。
私がアイドルにミュージカルに出てもらいたい理由はここにあって、アイドルとしてステージに立つことって、歌って踊って観客を惹きつける能力が必要なので、かなりの特殊技術が必要だと思うのですよ。こーさまも梅ちゃんもトップアイドルなので、アイドルの中でも特に能力が高い人であって、それは事務所が強いとか実家が権力者とか強いパトロンが付いてるとかそういうの関係ないところだから、本当に”強い”のです。ミュージカルは歌・ダンス・演技で舞台に観客の目を惹きつける必要があるので、アイドルの能力を特に活かせる場のはずなんですよね。
それでもミュージカル界で「アイドル」が低く見られがちなのって、本職の皆さんと比べると歌唱技術の弱さが目立ってしまうケースが多くて、「全然歌えないくせにアイドル人気で集客できるからってキャスティングされてチケット難になるのが納得いかない」とミュージカルファンの方々から怒りをぶつけられがちなのではないかなと思うんですよ。
技術のつたなさは相手がアイドルだろうが新人だろうが金返せと怒って当然なので、技術を高めることでしかお応えできないのですが、最初から歌えないはずと偏見を受けるのは超ムカつくので、みんなギャフンと言わせてやろうぜ!(私は何もしない)
最近特に感じたのは、エリザベートのルドルフ役をやっていた大我くんについて、初めて出演した2015年のオーディションで「経験の浅さ」を懸念されたという話を聞いたとき。確かに正統派ミュージカルの経験はないかもしれないけど歌唱経験はプロとして何年も積んできてるし、帝劇や日生にも既に何度も立ってるし、逆に他の若手俳優でこれほどの経験積んでる人いる?!と憤ったのだけど、懸念されるのもわからなくはない。しかし悔しい。ジャニーズ舞台やライブでの経験値は、外に出たらノーカウントになるほど低く見られているのか。
こんなに大きな事務所でたくさんのファンの前でたくさんステージに立ってるのに、その経験値を「たかがジャニーズ」と見下されるのはもったいなすぎるから、外部舞台で即実戦登板して問題なしと言わせるくらいのクオリティのものをジャニーズ舞台でも見せてよ、と思うわけです。あ、ジャニーズ舞台の文句になってしまった。
ドリボ演出に加わったこーさまが稽古時間の少なさを嘆いていたように、これまでのヒロム演出が開幕後にガンガン変更していくやり方だったのは、稽古中に試行錯誤して完成させる時間が取れてなかったからってのも一因としてあると思うんだよね。ヒロムのキャラクターとして「You、やっちゃいなよ」でとりあえず舞台に上げてしまうやり方が受け入れられていたけれど、しっかり稽古して納得して仕上げたものをお客様に観てもらいたい、というのがこーさまの想いなんだろうな。「ジャニーズは帝劇の価値がわかってない」と他の帝劇作品に出ている役者さんや観客の人たちに言われると肩身が狭い、と思いながら何年も帝劇座長を続けてきたのではないかなと想像してしまいます。

梅ちゃんの話からかなり逸れてしまったけれど、梅ちゃんは歌えるし踊れるし演技もできるし可愛いしでオールOKでした☆来年もどうぞよろしくお願いします。

*1:ジャニーズフューチャーワールドの略。私が観たのは2016年10月の梅芸。Princeと関ジュでやってた