太平洋序曲/マリー・キュリー/ミナト町純情オセロ

3月頃、Twitterでミュージカルに関するもやもやツイートがたくさん流れてきました。よく考えると、普段からミューオタ垢を追っているわけではないので、おすすめタブを見るようになったのが大きな原因のような気がします。
何があったか大雑把に言うと「上演時間問題」「チケット代が高い問題」です。これらについて語り出すと長くなるので語りたくなったら別で書きますが、なんかみんな不満が溜まってるんだな〜と思ったのと、みんなどんな基準でチケットを取るんだろうなぁということが気になりました。

私は財布と体力に限界があるので、推し俳優の出演作を中心にチケットを取るだけで精一杯です。舞台情報を追うのは好きなので、入らない作品のレポもよく読みますが、実際にはそれほどたくさんは観れていないです。
リピるかどうかは作品によるので、自分の好みっぽいかを吟味した上で他の予定を考えながら入りたい分を先に押さえます。だから、後から増やすことは滅多にありません。既に限界まで押さえてしまっているので。
もう少し若い頃は体力があったので、後から増やしたりもできていました。今はもうダメです。

なんでこんな話をしているかと言うと、私がチケットを取る基準は「観たい人が出ているか&観たい座組みか」なので、上演時間もチケット代もあんまり関係ないなと思って、もやもやには乗っかりきれなかったのでした。チケット代の件は、ムーランルージュ(MR!)があまりに高くて反響が凄かったのだけど、MR!が高いのは直近の韓国で知っていたので、騒ぐなら他の作品のチケット代が出てからでしょと静観していました。いや、まぁいろいろ改善すべき点はあるでしょうが…。

3月の東京は、スパイファミリー(帝劇)太平洋序曲(日生)ジキハイ(フォーラム)RENT(クリエ)ジェーンエア(東京芸術劇場)マリーキュリー(銀劇)ルーザーヴィル(新橋)などがあり、ミューオタは選択を迫られていました。これらが4月に全部東京より短い公演期間で上演された関西はもっと大変でしたが。
私はこの中で太平洋序曲とマリーキュリー、そして新感線のオセロを4月に大阪で観ました。4月は日生でザミュージックマンを観ないといけないため(最優先)、これが精一杯でした。

太平洋序曲

ミュージカル『太平洋序曲』公式サイト | 梅田芸術劇場
コムさんの「将軍/女将」2役と可知さんの「老中」が観たすぎて取りました。コムさんは機会があればぜひ舞台で観たいと思いつつもなかなかタイミングが合わず、我慢の限界に達した(?)というのもある。アナスタシアまでは待てなかった。だって将軍と女将だよ?!
前回の亜門さん演出版は知らなくて、ソンドハイムの曲が難しすぎると聞いてBW盤を聴いたらほんとうに難しくて!これを楽しく聴けるのだろうか、と心配になってしばらく躊躇していたのですが、一般発売後でもまだチケットが残っていたので、梅芸2階A席センターブロックを席を選んで取りました。昨年のイントゥザウッズでソンドハイムがトラウマになっていたミューオタが少なからずいたようですが(何かがあったらしい)、私は見ていないのと、今回のキャストなら大丈夫そうな気がしたのと、マシュー・ホワイトの演出も信頼できそうだなと思いました。ダメでもA席だし、コムさんと可知さんが観れればOKなので。耕史・海宝・ウエンツ回です。コムさんと海宝くんの組み合わせはアナスタシアで観ると決めているけど、海宝くん回が残っているなら選ばずにいられない。
一番不安だったソンドハイム楽曲は、BW盤をひたすら聴いて耳を慣れさせました。そのおかげかキャストの歌唱力のおかげか、曲への抵抗感はほぼなく気持ちよく聞けました。海宝・ウエンツがスッキリで歌うのを観られたのも良かったし、大阪公演だから舞台動画を観られたのも良かった。
youtu.be

日本の開国がテーマだけど史実とは異なるところもあり、しかし現代の日本と重ね合わせて見てしまう部分もあって興味深い内容でした。この部分を考察するためには、何度かリピートしなきゃいけない。初見では、歌と舞台美術の美しさ、アンサンブルと呼ぶのが相応しいのか悩んでしまうフル活躍のキャスト陣に目を奪われているとあっという間に終わってしまいます。

少女が海兵隊3人から声をかけられて「お嬢さん一緒に遊ぼう。お金なら出すよ」のくだりが本当に本当にしんどかった。少女の恐怖、父親の怒り、海兵隊の無邪気さ、すべてがしんどい。同じ3人組の海兵隊だったオンザタウンを思い出して、アイヴィも見ず知らずの男から追いかけられて怖かったのでは、と心配になってしまいました。あんなに楽しいミュージカルなのに。

開幕直前のイベントで一幕ものだと判明して騒ぎになったわけですが、一幕になった経緯はこちらの説明のとおりです。出演俳優さんにこんなにご心配をおかけして心が痛んでしまう。騒いだ人たちの中で実際チケットを持ってた人はどのくらいいるんだろう。


その前に出たクロネコチャンネルの「10分でわかる太平洋序曲」も反響が大きかったですね。
youtu.be
この動画を見るまで太平洋序曲が開国の話だと分からなかったという声があり、確かに、特に写真入りポスターからは全然伝わらないなと笑いました。爽やかで良いお写真なんだけどね。写真なしチラシの方が作品内容を表現できている。
でも、キャストに惹かれてどんな作品だろう~?とあらすじを読めば一発で分かるし、開国の話だと気づかない程度の興味の人がこの作品のチケットを取ろうと思うことはないんじゃないかな。いや、開国の話と知ってたら興味をひかれたとかあるのかな??しかし、公式サイトのあらすじよりもクロネコチャンネルの方が圧倒的にストーリーがわかりやすくて面白そうに感じたし、メインキャストの決起集会よりも作品自体の宣伝になっていた気がしたので、宣伝…むずかしいな…と考えさせられました。
コムさんはかわいらしくて妖艶でした。それだけで充分チケット代の元は取れた。

マリー・キュリー

ミュージカル『マリー・キュリー』
ちゃぴちゃんのことはFCに入るくらい好きなのですが、日程の問題と、日本初演でどんな作品かわからなかったのとで、FC申込期限ギリギリまで悩みました。でも、ジャニーズから屋良さんも出るし、韓国ミュージカルアワードで5冠取った作品だし、観ておいても良いかもしれないなと思って取りました。ちなみに、私はキュリー夫人の伝記は読んだ記憶がありません。図書室大好きっ子だったのになんでだろう。わからん。

一般発売後、チケットの売れ行きが芳しくない場合に発動されがちなアフタートークが発表され、エリザのちゃぴちゃんでも銀劇でこんな感じか〜厳しいな〜と思っていましたが、初日を迎えて状況が一変します。


私が見たのはこのツイートなんだけど、本当に大絶賛!
他にどんなツイートが流れていたのかは追えてないものの、マリーキュリー観に行かなきゃとチケットを取る人をたくさん見かけたし(土日でも取れた)、観てきた人たちはみんな絶賛。
すごいことが起こってるな〜とTLを眺めていましたが、くるみちゃんのこのツイートに衝撃を受けました。
出演者の口からこんなこと言わせたくない!(泣) 自分の知名度の低さや集客力の弱さのせいでこの素晴らしい作品を沢山の人に観てもらえない…と心を痛めていたのではと、つらい気持ちになりました。

作品の評判を聞いてチケットを取れるのは理想的な姿だけど、あとからチケットが取れるということは売れ残っているということでもあり。どのあたりが損益分岐点なのかは作品にもよるだろうけど、作品を作る上ではいろいろとお金がかかっており、その支出はチケット代という収入で賄われるものです。収入が支出より少ないと赤字です。興行はビジネスなので、赤字の興行が続くと会社としても舞台制作に手を出しづらくなることもあるでしょう。
舞台作品はあちこちで上演されていますが、人気作は超激戦でレアチケットが高額転売されるのに対して、あまり集客できない演目もあり、仕方ないところもあるけど難しいな〜〜と心を痛めています。舞台に限らず、映画でも大ヒット作とそれ以外の差が激しいという話を聞きます。

くるみちゃんの言うとおりキャストの知名度だけでチケットが売れるかというと、私はそうではないと思っていて、ミュージカルの場合だとやはり新作より人気作の再演の方が圧倒的に集客できる気がします。あの曲が聞ける、あのシーンが見れる、と分かってるものになら安心してお金を出せる。エリザが再演でキャス変しても集客できるのはエリザだからです。その点、マリーキュリーは、ジキハイRENTよりだいぶ分が悪い。私はちゃぴ担でジャニオタだから、新作でも「観るか、観ないか」の俎上に載せたけど、自担が出ていなければ観るかどうかすら選択することはなかったでしょう。
韓国版の再演でマリー役を演じたのがオク・ジュヒョンさんだということを、スペシャルカーテンコールで初めて知りました。
私は韓国ミュージカルを観ていないし、俳優さんの名前もほとんど知らないのだけど、オクさんのことは、ちゃぴちゃんと加藤和樹さんの韓国演劇番組で知りました。ちゃぴちゃんは韓国のエリザベートでシシィ役を演じているオクさんの大ファンで、直接会えたことに感涙していました。ちゃぴ担的には「オク・ジュヒョンが演じた役」って最初から言ってくれてた方が食いついたのにと思わなくもないけど、ちゃぴ担ならそんなの関係なく観ますね。

東京で観た人たちが口々に泣いた泣いたと言うので、ほんとかな~どこで泣くのかな~と思いながら観ましたが、まんまと号泣しました。
夫のピエールが「大丈夫」と言ったところで涙腺崩壊。ピエールはずっとマリーのことを励ましてくれていたし、マリーはなんとかしようとがんばっていた。
Fact<歴史的事実>とFiction<虚構>を掛け合わせた「ファクション・ミュージカル」と銘打たれていますが、キュリー夫人の伝記を読んでいないし、どこからどこまでが史実なのかは分かりません。でも、史実を知らなくても演劇作品として充分楽しむことができました。ラジウムに心がざわつく程度の知識があればよい。その程度さえ分かっていれば、前半の希望に溢れるシーンにも、暗い未来を予感できる。
号泣するほど感情を揺さぶらせたのは、やはり音楽の力だと思うから、私はミュージカルが好きだなぁ。
屋良さんのルーベンという役は、韓国版ではダンスはないそうですが、日本版演出として踊っていました。音楽で感情を表現するのと同じように、屋良さんが感情を最大限に表現できるのはダンスだと思うので、ダンスが封印されなくて良かったなと思いました。

ミナト町純情オセロ

ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~|劇団新感線公式
三宅健×劇団新感線。そりゃ観ます。
FCで大阪公演を申し込んでたんだけど、申込後にザミュージックマンが発表になって、申し込んでたのがザミュ日生に行きたい週だったため、当選したけど支払わずに流して、翌週を新感線公式サイト先行で取り直しました。ザミュへの気合い。その翌週もザミュを見に行きたくて、この週しか選択の余地がありませんでした。
しかし、同じ週にマリー・キュリーもあり、「できれば土日がいい」(なるべく仕事を休みたくないなど)「土日両方を観劇のために外出するのは嫌」(体力の問題など)「マチソワしたくない」(体力と集中力の問題)という様々な条件を天秤にかけ、マリーマチネ&オセロソワレにしました。マチソワしたくない気持ちには我慢してもらいました。
でもやっぱりマチソワ嫌だな~~初新感線の健くんは観たいけど、関西弁ヒゲやくざの健くんを観たいかと言われたら悩ましいな~~とグルグル悩みながら東京初日を控えた2/20、健くんの退所が発表されました。
オセロ千穐楽の翌日が退所日で、退所後はしばらく活動休止するとのことだったので、オセロはジャニーズアイドルとしての仕事じゃないけれど、ジャニーズの三宅健を見納めに行くかー、という気持ちで行くことを決心しました。

嫌だな~~の大部分は、マチソワ自体にではなく、実は劇場にありました。東京公演はブリリアで、劇場の評判の悪さゆえ、どの席が割り振られるか分からない先行申込を回避したいという声も少なからずありました。私は大阪公演なのでWWホールなのだけど、最初に入った時の印象が良くなくて、この劇場に行くのはあんまり乗り気になれないのでした。最初に入った時にスピーカーに近い席で爆音に苦しめられたのもあるけど、私はこの劇場の「イベント会場」的な簡素な作りが気に入らないのです。他の劇場は、見切れても椅子が硬くても「劇場空間」という雰囲気に高いチケット代を出してもいいと思えるものだけど、ここにはその特別感が足りない。ブリリアは14000円なのにWWは14500円…ザミュージックマンと同じってどういうこと…とチケット代に文句を言うオタクになっていました。新感線ちゃんはわるくないよ。
しかし、私の場合は第一印象が良くなくて呪っているだけで、他の方はそこまで悪い印象を持っていないようでした。芝居を観る分にはそこまで不都合はない。ネガキャンはやめよう。

三宅健と新感線と言えば森田剛ですね。ごーくんの初舞台作である「荒神」も新感線の作品です。新感線は作品によってトーンが違い、その後に出演した「IZO」「鉈切り丸」はシリアスでしたが、「荒神」は冒険活劇な感じ。健くんの舞台は静かに思い詰めるタイプのものが多い印象ですが、本人の普段のキャラクターは天衣無縫で小悪魔的なので、荒神のような作品の方が合ってるんじゃないかなと思っていました。私が健くんの演技で好きだったのは「名探偵保健室のオバさん」と「ビューティフル・サンデイ」です。これは単純に私の好み。健くん自身は鉈切り丸の方が好きかもしれない。
今回はシェークスピアのオセロを題材にした関西任侠もので、8割コメディ2割悲劇、くらいの塩梅でした(私感)。一本気なところもコミカルな面も健くんに合っていたので、濁声の関西弁ヤクザでさえなければ…!と口惜しかったです。あのトーンじゃないとヤクザ感が出ないのはわかる、わかるんだけど。そもそもヤクザじゃなければもっと魅力が発揮できたはず!
私が見た回は、声がつぶれてるんじゃないのかと心配になるレベルの濁声だったけど、声色を変えてるのもわかってるから判断つかなかった。周りの皆さんが滑舌くっきりだから余計に。

関西小劇団ブームを知っている世代なので、新感線には昔から馴染みがありますが、作品自体はそれほど観ていません。前作のオセロも観ていないので、新鮮に楽しみました。青木豪さんは座付き作家じゃないのに劇団員にあてた脚本を書けてすごい。健くん、玲奈ちゃん、テラが客演でしたが、今回のテーマは「女性劇団員を活躍させること」だったそうで、ちゃんとオセロが主役の筋書きにはなっていたけれど、高田聖子さん演じるアイ子姐さんが主役だと感じた人も多かったと思います。聖子さんは充分主役になれる人。他の女性劇団員さんもキャラが立った役で良かったのだけど、これまでここまでの活躍をする場が無かった…ということ…?!と衝撃を受けました。女性が活躍する話でも客演の女優さんがやっていたということか。今回意識してそのように取り組まれたのは非常に良いことなのだけど、「女の子たち」と言っても皆さん私より年上なのに…と戸惑いました。気付きには時間がかかるものだ。

そう言えば、テラのことを書いてなかった!健くん目当てで観に行ったブイ担たちが1幕終わりにみんなテラのことを褒めてたのが印象的。テラはいいぞ。歌もダンスも出来て、ジャニーズっぽさはないけど好感を持てる程度には華がある(褒めてます)。いろんなカンパニーに出演していて、いい経験が積めているのがいいな。