薔薇と白鳥と先入観

Hey!Say!JUMPの高木くんと八乙女くんW主演舞台「薔薇と白鳥」6/30の大阪公演を観劇しました。
ドームコンもやっちゃうJUMPさん、アリーナツアーなんて血で血を洗う闘いという現状なのに、メンバー2人がW主演する舞台がグローブ座や森ノ宮ピロティホールだなんて殺す気か、という感じでしたが、私のようなゆるい人間もなんとか潜り込むことができました。G2さんのメルマガ枠で。JUMP枠は普通に落選でした。ありがとうございます。

ゅぅゃ(高木くん)は初めての外部舞台、光くん(八乙女くん)は4年ぶり2回目ということで、恐らく舞台観劇の経験がほとんどないファンも少なくなかったとは思うのですが(新規が多い前提)、客層の若さと、カーテンコールのキャー!という歓声がコンサートのアンコールみたいだったくらいで、観劇マナーなど特に気になるところはありませんでした。キャー!って言うのは、私は別に悪くないと思うんです。我々だって心の中ではキャー!って言ってるんですよ。黄色い声が出ないだけで。声が出ない代わりに拍手で伝える。逆に、キャー!と叫ぶべきコンサートでも何故か拍手しがちなブイ担。

ゅぅゃ演じるシェークスピア(ウィル)と光くん演じるマーロウは実在の人物だけど、史実をベースにしたG2さんのオリジナル脚本で、カタカナ名前なんて全然覚えられないし一回しか観なくて理解できるのか心配でしたが、そのわりに観劇レポを漁って予習することもなくゆるく挑んでしまい、それでもだいたい理解できたつもり。面白かったです!でも、カタカナ名前が覚えられないので2人以外の役名は忘れました!公式サイトくらい残しておいてよグローブ座さん!

事前に読んだ演劇誌に「マーロウは同性愛者」とあったのが気になっていました。東京公演観劇済の同行者に「その設定はどのくらい生きているの?」と開演前に質問したところ、「そういうシーンは無いのだけど、武田くんと過去何かあったに違いないと睨んでます」という素敵な回答。「その設定、採用!」と言って、楽しく観劇することが出来ました。

私はネタバレ許容派だけど、例えばミステリーなら、犯人やトリックはさすがに知りたくない。今回だと、ウィルの秘密が鍵なので、それは知らずに観ることが出来て良かったです。
「マーロウが同性愛者である表現があるか」を事前に確認したのは、光くんにそういうシーンがあることを期待して観てしまって、無ければガッカリして評価が下がってしまいそうだったからです。勝手に期待して勝手にガッカリするくらい無駄なことは無いし、失礼すぎる。なので、先に確認してフェアな視点で見ようと思ったのでした。

ネタバレを回避するのって「先入観なく見たい」という理由が一番だと思うのだけど、「過度な期待」「〇〇はこうあるべき、という決めつけ」も先入観の1つだと考えていて、観る側の思い込み・期待した姿になっていないことで作品の評価を下げるのは、フェアじゃないと思うのです。自分の中の期待像との比較ではなく、あくまで出されたものの面白さで評価したい。

先入観と言えば、G2作品を長く観てきた人なら分かってもらえると信じているのだけど、G2さんが書くオリジナル脚本は、伏線バリバリあってラストで回収するどんでん返し展開が多くて、でも若干ファンタジックが過ぎたり無理矢理感が強かったりする傾向があるのです。それが苦手な人たちは、G2さん作演出と聞くと「えーーーG2さんの脚本かーー」という反応になりがち。でも、最近見た「戸惑いの惑星」「薔薇と白鳥」はパターン的には同じでも無理矢理感はあまり無かったし、良い仕上がりだったと思うのです。思いっきり落とした挙句の上から目線な感想ですみません。土下座。
G2作品を観たことない光くんファンの同行者には、この情報は伝えませんでした。だって、これから初めて観る人にこんな情報は要らなくない?これまで観てきた自分がどういう印象を持ってるかは私の勝手であって、他の人に押し付けるものじゃない。どんな作品傾向があるのか、という意見を求められたら正直に伝えますが。
私には「G2作品はこんな傾向」という先入観があって、それは経験に基づくものだから消して観るのは難しいし、逆にその先入観があるからこそ「心配していたよりは良かった」という感想になったのかもしれない。逆に、先入観なく観た人には「この展開は無理矢理だな〜」と感じたかも。

マーロウについて「武田くんと過去何かあったに違いないと睨んでます」という同行者の言葉も先入観を与えられてると言えるけど、私はこういう先入観はウェルカム。二次創作育ちだから、美味しい解釈は美味しくいただきます。何回も見れるのなら自分なりの解釈をするのもアリだけど、一回しか見れなくて後から言われると「そんな目で見てなかったよ!先に言ってよ!」となるので、先に言っていただけるに越したことはないです。ありがたいです。絶対に、武田くん(が演じるフライザー)とはなんかある。

ジャニオタ界隈に限らず、ネタバレの取り扱いは難しくて、というのも私の中だけでもこれだけ様々な判断基準があるのだから、ルール化するのは非常に面倒くさいのです。周りにネタバレを避ける人が少なくないからなるべく配慮しなきゃと気をつけていても、やっぱりマイルール優先になってしまう。

他人を気遣うべきという意識があってもなかなか実行に移せないのだから、そもそも先入観や偏見を持っていることを自覚できていなければ配慮なんて出来るわけない。「私には差別意識はありません」と言ったその口で差別発言をする生き物なのです。

共に迫害される立場である、カトリックのウィルと同性愛者のマーロウ。ウィルはカトリックであることを隠して生きていかなきゃいけないし、そのために大きな事件を引き起こすまで追い詰められる。対するマーロウは、同性愛者であるが故の追い詰められた様子は見受けられないけれど、「自分は自分の信じる道を行く」という開き直りを感じる。そんなマーロウだからこそ、ウィルを救うことができたんだろうな。クライマックスのシーンの2人は鬼気迫っていて、息をのんで見守ってしまいました。

光くんの演技が上手いことは金八時代から知っているので、安心して見ることが出来ました。舌足らずなところはあるけど(歯の矯正中なので)可愛いし、大口を叩くマーロウのキャラクターに合っていて違和感はなかったです。
ゅぅゃは、ドラマ演技は何度か見てるけど正直表情が固い印象があって、初舞台でどんな演技をするのかドキドキでした。でも既に見た人たちが一様にゅぅゃの演技を絶賛するので、ドキドキがワクワクに変わりました。最初の「いい人ウィル」の間はずっと張り付いた笑顔なので演技力は測りかねるんだけど、秘密がバレて感情を露わにするところとかすごく良かった!ゅぅゃも、舞台を楽しんでくれたみたいで嬉しいです。コンサートでは表情豊かで魅力的なので、ぜひ次はミュージカルを!

演技力を評価できるほど見る眼はないのだけれど、主演2人に比べると共演者さんたちの方が経験豊富で演技も上手かったと思うし、どちらかと言えばゅぅゃより光くんの方が上手いのだと思う。でも、観劇した人たちが口々にゅぅゃの演技を褒めていたのは、私同様、ゅぅゃの演技に対する先入観があったからだと思うのです。評価をする上で先入観は妨げになります。「アイドルにしては」「ジャニーズにしては」等、個人ではなく肩書に対する先入観もあります。そういうの、どうやったら無くせるんだろう。無くすのが無理なら、せめて先入観との付き合い方を考えていかなきゃいけないのではないか。

このように色んな「先入観」について考えさせられた観劇でした。ゅぅゃがカッコ良かったよー♡ひかにゃんが可愛かったよー♡だけでも全然元は取れるんだけど、色々考えてしまうのがそれはそれで楽しいです。