キャメロット

舞台情報が解禁されたのは4/3、ザミュージックマンの開幕直前でした。ザミュと同じ日生劇場とは言え、こちらは松竹主催。私がまー担になってから、まーくんさんの舞台で松竹主催の作品はなかったので、チケットの取り方からしてまず勝手がわかりません。
松竹主催の舞台を観たことは何度かあるけれど、FCでしか取ったことがありませんでした。松竹歌舞伎会というものがあることは知っている。プレイガイド先行の情報はあまり見た記憶がない。1回観るだけならFCで取ればいいのだけれど、何回も観たければ他の販路でも確保する必要があります。案の定、歌舞伎会以外に先行が無いまま一般発売日が近付き、不安でいっぱいでしたが、一般発売日にチケットWeb松竹で座席選択して悠々と購入することができました。大阪松竹座の土日公演でも前方席が選べて、アイドルのFC2つにチケットを配分した後でこれ?!申し込み数めちゃくちゃ少なかった?!しかも余裕でサイトに繋がるのは何故?!と不安が高まりました。ちなみに一般発売はプレイガイドもありましたが、こちらは比較的早く売り切れていたようです。どんな配分になっているのか…。松竹座は日生の千秋楽時点でもまだチケットが残っていました。たしかに大阪公演で2週間強は長い方だし、日程や席によっては残っていても不思議じゃないけど、一般の人はプレイガイドで売り切れならわざわざチケットWeb松竹を登録してまで確認しないだろうから、勿体ないなと思いました。
しかし、ミュージカルの割に渋すぎるポスタービジュアルで、食指が動きにくいのも理解できる。私も自担がいなければスルーしていたかもしれない。そう考えると埋まった方なのかも?

情報解禁で真っ先に心配したのが松竹主催舞台のチケットの取り方のことだったけれど、もう一つはアーサー王という役についてでした。
アーサー王伝説を題材にした作品はいろいろあるのだけど、今年だけでも「キングアーサー」(ホリプロ)、「エクスカリバー」(宝塚)と続いています。浦井くんと芹香さんはベテランだけどまだ若々しさがあるからエクスカリバー抜けそうだけど、まーくんさんも抜くの…?まじで…?いや、まーくんさんがショタから老婆まで変幻自在なのはマーダーで知ってるけど、知らない人は2人と比べてびっくりしちゃうじゃん?そしてあのポスタービジュアルを見て、やっぱり無理だよ!と頭を抱えました。(アーサー王伝説をご存知ない方にざっくり説明すると、若いアーサーがエクスカリバーを抜いて王になるところから始まる話なので、「エクスカリバーを抜く」=「若いアーサー」の意です)
タイトルが「キャメロット」であのポスタービジュアルだから、直近のアーサー王の記憶が新しい方々にまーくんさんがアーサー王だと気付かれないといいな…とドキドキしました。

キャメロットは今年ブロードウェイでも上演されトニー賞リバイバル作品部門にノミネートされました。
トニー賞のパフォーマンスを観ましたが、アーサーがいかにもエクスカリバー抜けそうな若さで(そればっかり)また震え、ランスロットはドレッドヘアでした。
よくこのタイミングで日本でも上演できたなと驚きましたが、どうやら今回上演したのは今年のBWリバイバル版ではなくオリジナル版だったようです。(アンサンブルさんのブログ参照→ 「キャメロット」後記 | 石川 剛のブログ) そもそも演出はBWとは違って宮田慶子先生なので、今年のBW版とは違う演出になるのは理解していましたが、リバイバル版は設定もかなり変わっていたようです
そんなことは知らなかったので、アーサー王伝説と言えばマーリンとモーガンだよねと思っている私は、松竹が発表したキャストにマーリンとモーガンがいないことに動揺しました。恐らく番手的に辰巳さんと咲良さんがマーリンとモーガンなのだろうけど、メインキャスト扱いではないということはそれほど重要な役どころではない…?マーリンとモーガンやで…?ミュージカル界におけるこの2人の知名度を知らんか?(←直近に観た宙組エクスカリバーに脳を焼かれている) しかも、BW版のキャストにはちゃんと載っているんですよ。開幕までずっと動揺していました。結果として、2人のキャストは予想通りで、マーリンは最初にちょっとだけ、モーガンはモルドレッドの叔母として2幕にちょっとだけ出ていました。マーリンとモーガンには何も関連性がありません。しかもモーガンは魔女なだけでアーサーに好意的だし。私の知ってるモーガンはアーサーの姉で、アーサーのことを呪っています。今年のBWリバイバル版ではモルドレッドの母がモーガンだったようです。私もそうだと思い込んでた。
アーサー王伝説を元にしているとは言え、作品やバージョンによってストーリーも登場人物もさまざまです。キングアーサーは敵ポジションでメレアガンが出てきます。えっ、アーサーとランスロットの話じゃないの?メレアガンって誰?宙組エクスカリバーランスロットはアーサーにとって幼なじみの兄のような存在ですが、キャメロットだとフランスからやってきます。キャメロットにおける兄ポジはペリノアかもしれません。
これだけいろいろ違うと、アーサー王エクスカリバーとグィネヴィアとランスロットがいれば、他はどう切り取っても良し、という解釈の自由さを感じます。私は、モーガンはクソデカ感情でアーサーを痛めつけないとダメ!解釈違い!!と歯ぎしりしていたのだけど、みんなは解釈違いで殴り合わないの?心が広いなぁ。

グィネヴィアとランスロットの不義に憤る感想をよく目にしましたが、私は「まぁそういう話やしなぁ」と特に苛立ちはしませんでした。モーガンの扱いには怒り、不義には怒らない謎の倫理観。モルドレッドの母の魔法の力でアーサーが一夜を共にしたように、グィネヴィアとランスロットが恋に落ちるのも魔法のせいという解釈もあるくらいですし。しかし、今回の2人はちゃんと惹かれ合っていることが表現されていて、興味深いなと思いました。グィネヴィアはアーサーと結婚する前からおもしれーことにワクワクする女で、私をめぐって2人が争うとかメッチャワクワクするじゃん!絶体絶命(山口百恵)!と軽率に言ってたけど実際にそうなったら笑い事じゃなかった、という示唆に富んだ話だなと受け取りました。伝統にはとらわれたくない自由でいたい、と願う王妃はミュージカル界にはごろごろいます。親の決めた相手と結婚させられそうになって逃げ出す気持ちはよくわかる。たまたまアーサーがおもしれー男だったから結果オーライ。でもランスロットもおもしれー男だった。初対面の印象は最悪。でも、自分のした非道な仕打ちへの申し訳なさや、自分たちを責めない純粋さに、一気に心を奪われてしまったのだろうなと思いました。話はズレるけど、空気が読めないランスロットに陰口を言うあの感じ、コイツは叩いてもいい奴と認定したらみんなで叩き潰すよくある光景で、かなりはらわたが煮えくりかえりました。不義には怒らないがイジメには怒る倫理観。

モルドレッドがアーサーを陥れようとするのは理解できるけれど、アーサーがモルドレッドを円卓の騎士に招き入れるのは理解しづらい。アーサーはモルドレッドが悪意を持っていることは察しながらも、何かしらの理由をつけて拒むことはしなかった。それがアーサーの考えた円卓の騎士の理念なのでしょう。円卓の騎士を任命するのはアーサー王だけど、円卓には上座も下座もなく、特定の考えに従う者だけで構成されるわけではない。法に基づき皆で話し合って決める。だから何かを決めたり判決を出す際にどんな結論が出るかわからない。それが面白いんだ、とアーサーは言う。人は自分の意見を通すために、味方で固めたり相手を陥れたりするものだけど、自分はそんなことはしたくないという理想が見える。「新しい伝統」というキーワードに、伝統に囚われない柔軟さがあります。

グィネヴィアとランスロットの密会をモルドレッドに暴かれ、反逆罪だ!と追い詰められたランスロットは、おとなしく捕まるのではなく抵抗して自国に逃げ、捕まったグィネヴィアを助けるために兵を率いて戻ってきます。このくだり、なんでわざわざ戦争を起こすの?とランスロットの行動に納得がいきませんでした。というか、反逆してる?挙兵したことについてランスロットに反逆罪が適用されるのは理解できるけど。王妃と密通しているからといって、王に取って代わろうとしているわけでもないし。夫婦間の問題なんだから許すかどうかはアーサーが決めれば良いだけじゃない?法で裁かなきゃいけないものなの?ましてや死罪とか。不義は咎めない倫理観の持ち主なので、意味がわかりません。そもそも王に反逆してるのはモルドレッドなのに。法に基づくとモルドレッドは裁けず、グィネヴィアとランスロットは反逆罪になるの、全然納得がいきません。アーサーは2人の関係に薄々気付いていたのだろうけれど、このように暴かれたら何かしらの処罰を与えないといけない、しかし自分の心情としては裁かず見逃したい、そのジレンマが辛いなと思いました。「正義のためではなく、復讐のために戦う」という台詞がどの流れで出てきたのか忘れてしまったのですが(ブログに書こうと思ってメモしておいたのに放置しすぎた)、アーサー王伝説の主題は「何のために戦うのか」です。復讐のために戦うのではなく、正義のために戦いたいとアーサーは言いますが、不義を正すために戦うのは正義のためと言えるでしょう。しかし、その不義は本当に戦いで正すべきものなのだろうか。いろいろ考えさせられてしまいます。

戦争の中で、アーサーは少年トムに出会います。トムは周りの人たちから聞いた円卓の騎士の話を聞いて憧れています。理想の姿として立ち上げた円卓の騎士が崩壊して心が折れているアーサーにとって、円卓の騎士に憧れてくれるトムの存在は救いでした。やはり円卓の騎士は理想なのだ。自分の人生は諦めたけれど、このような理想を掲げたものがいたことを後世に伝えてくれることに希望を見出して終演です。これをハッピーエンドと見るかバッドエンドと見るかは人それぞれでしょう。私は一条の光だと感じました。この頃なんやかんやあったので、私はトムのことを新しく入ったジュニアだなと思って見ていました。旧事務所のエンタメに憧れて入ってくれたチビジュにエンタメの楽しさ・素晴らしさを伝えたい。事務所は楽しく素晴らしいだけではないのだけれど、未来の世代にはエンタメの理想を信じて生きてほしいと大人タレントたちは願っていることでしょう。観終えた時にはそんなことを考えてしまいました。私は一体何を観ていたのか?

まーくんさんの長いミュージカル人生で、このようなコスチュームものは無かったので、見慣れない姿にぞわぞわしていましたが、これから色んな作品をやっていくためにもコスチュームプレイの実績を解除しておくのは大事だなと受け止めました。得意の古典ミュージカルとは言え、ザミュージックマンやTOP HATのような飄々としたキャラが多いので、このように重厚なストーリーで悩み続けるキャラクターは珍しい気がします。個人的には、ラブストーリーは多くても嫉妬に苦しむ姿はあまり見ないので、それもレアで良かったです。いつも同じようなキャラクターじゃつまんないからね!エクスカリバーは抜かなかったけれど(思い出話として処理)、マーリンと一緒の間はボンクラな若者のはずで、演技の力か衣装の力かちゃんと若者だと伝わりました。すごい!見た目というよりも、声が若々しい。WOWOWのテニス番組でナレーションをしていたこともあるけど、声のお仕事も良いのではないかと考えながら観ていました。ディズニー映画の吹替とかね!!!(言霊) 木の上から登場するので、シシィと呼んでいました。

あきとくんはずっとまーくんさんと共演したいと言い続けてくれていて(一応月9での共演経験はあるはずだが)、やっと共演できました。歌うまさんだけどストレートプレイが多くて、外部ミュはブラッド・ブラザーズだけでした。私は舞台で芝居を観たのは「赤シャツ」だけだと思いますが、あきとくんのお芝居も歌も心配は全くしていませんでした。ランスロット役も金髪碧眼のフランス人役も本来のあきとのキャラクターからかけ離れすぎていて、マーサー王と同じくらいハラハラしましたが、高いハードルに頑張って挑んでいました。歌のキーも普段より低かったけど、丁寧にミュージカルの発声で歌い上げていました。丁寧さが強くてまだ自分のものには出来ていない気もしたけれど、これは経験の問題なので。稽古場では他のキャストさんとすっかり打ち解けたようで、常に自分のことでいっぱいいっぱいのまーくんさんが感心していました。さすがの座長経験の多さとコミュニケーション能力の高さです。まーくんさんも、あきとくんとはちゃんと打ち解けられたようだし、周りのキャストさんからは高嶺の花としてキャーキャー言われていた(?)ようなので結果オーライ。

ふうかちゃんは地声が可愛らしくて俗に言うアニメ声なんだけど、グィネヴィアが小悪魔キャラで歌のキーも高いので、ふうかちゃんの声に合っていて違和感がなかったように感じました。高いキーの歌は初めてと仰ってて意外!パンフレットで、グィネヴィアがアーサーと初めて会ってすぐ好きになったのは父親みたいな懐の深さを感じたからではと語ってらっしゃいましたが、その段階のアーサーはまだボンクラのはずだから父親みがあるのはまーくんさんだからなのでは(笑) まーくんさんと相手役さんとの年齢差がどんどん開いていく問題は深刻化していますが、まーくんさんはデュエットダンスが似合いすぎるから、やっぱりかわいいヒロインとペアになってほしい気持ちもあります。

キャメロットが終わって2ヶ月近く経ちますが、次の作品のお知らせがなく、かと言ってトニセンで何か予定されているわけでもなく、えーほんとにー?とモヤモヤしながら過ごしています。アテプリのゲスト仕事についてはまた終わってから書きますが。元気に過ごしてくださっていれば全然OKなのですが、ミュージカル俳優さんはバンバンいろんな作品に出演されるので、まーくんさんの予定が出ないのはやっぱりちょっと不安ですね。
個人的には、Wキャスト/トリプルキャストの役か、主役以外の役をやってみて欲しいな、という願望があります。単純に観てみたい。FC会員だけで埋め尽くしてしまえるくらいだと、主役&シングルキャストじゃないとFC枠の配分が厳しそうですが、FC枠が少なくても大丈夫ならいけるかも。最近、チケットの出演者FCへの割当てについて問題意識を持っているので、いろいろと考えてしまう。チケットWeb松竹で発売日に席を選んで買えたことから、FC枠がなくても行けるんじゃない?という気持ちになって来ました。油断は禁物。今後(事務所との契約も含めて)どうなるかは様子見ですね。