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戸惑いの惑星 感想まとめ

TTT「戸惑いの惑星」全40公演が終わりました。私は結局、グローブ座2日目、福岡2日目、大阪土日の計4公演観て、最初と最後が見れたのと3拠点全部見れたのがバランス良くて、すごくラッキーでした。

公演が終わると同時に濁流のようにレポ絵とか感想とかが上がってきて、もう!あまりにネタバレ禁止の空気が重すぎるからトニセン本人にまで伝わっちゃったじゃん!と激おこでしたが、終わってみればそれもまた良い経験。次に繋げよう。前回まで私の世迷言だと思ってたのが実はそんなことないのでは?!と自信をつけたので、もう少し真面目に主張してみます。トニ現場ではまだ少数派で非難されることも少なくないけどメモを取りまくったので、場面の説明もしてみます。だって、すぐ忘れちゃうから勿体無い。

話の流れ

トニによる観劇の注意。
キヨちゃんが手紙を持ってくる。「この年になっても戸惑うことはありますか?」
長「夜空の星に戸惑う」
坂「占い」
井「ふと気づいたらディズニーランドのクラブ33にいた」
坂長から「はせっち」と呼ばれた途端、眩暈を起こす。人格喪失症と診断されたと告白。

<病室>
ベッドに座る長谷川。お見舞いに来ている三池と由利。
この3人は最近不思議な出会いをした。

<スタジオ33>
手紙で呼び出されて集まった3人。同じ高校の顔見知り程度。三池は絵がうまかったが、今は絵はやっていないと答える。
箱の上に手紙。中には楽器と譜面。吹いてみる。この曲を3人とも知っているのは何故?これは、その謎を解き明かす物語。

☆Change Your Destiny

<病院のベンチ>
三池と由利。長谷川は昨日からずっと眠っている。由利が病室から小説を持ってきて2人で読みはじめる。長谷川が小説家志望だと母から聞いた、と由利が話す。由利ママといえばユリゲラー。それにはあまり触れてほしくなさそうな由利。
小説は、子どもの頃の長谷川の話から始まる。

<学校>
長谷川は手紙や文章を書くのが好き。先生から小説家になれと言われてその気になる。

<出版社>
長谷川が小説を持ち込み。編集者(坂本)から、ある有名な作家は126回断られたが127回目に採用されて売れたという話を聞かされる。
10年後、編集者(長野)から「これは小説ではない」と言われた上、手紙代筆業を薦められる。

<街>
長谷川が手紙代筆の事務所を探していると、似顔絵描きをしている三池に出会う。手紙代筆はゴーストライターみたいなもの、自分が無くなるから止めておけ、と言う三池。幽霊の話から、三池が最近会った研究者について語りだす。

<大学>
三池を招き入れる由利。由利の似顔絵の不思議な力を調べたい。怒って出て行く三池。
教授(井ノ原)が入ってくる。由利に研究を続ける理由を尋ねる。1つは妹の応援があるから。もう1つは、母がスプーンを曲げるところを見たから。

不惑

<病院のベンチ>
自分たちの出来事が小説に描かれていて困惑する2人。人物は違うところもあるが、エピソードは一字一句同じ。

<手紙代筆>
客1・マダム(長野)は色々注文をつけた挙句キャンセル。客2・ヤクザ(坂本)は果し状を依頼。

☆オレじゃなきゃ、キミじゃなきゃ

<ジャズクラブ33>
由利がカウンター席に座ると隣には三池が。由利に言われた通り、自分の絵には予知能力があるらしい。受け取った多額の謝礼金を使おうとこの店に入りトロンボーンを吹いていると、彼女が現れ、恋に落ちた。
☆Sing!
しかし自分の描いた彼女の似顔絵を見るやいなや、彼女は姿を消した。彼女から届いた手紙をマスター(井ノ原)に読ませる。彼女は記憶喪失だったが、似顔絵を見て記憶を取り戻し、自分の居るべき場所に帰ったのだと言う。それから絵が描けなくなった。由利は大学に辞職願を出していた。

<大学>
由利の妹は、半年の命であることを家族に隠して亡くなった。教授は由利を引き留める。由利ママ(坂本)からの手紙。由利は教授に、妹の机の引き出しで見つけた手紙について問う。宛名のない手紙は我々の知らない方法で宛名の主に届く、と答える教授。

<ジャズクラブ33>
小説を読む2人。これは昨日の出来事なのに!と驚く由利。病院で小説を読み始めたのに何故ここに?出口はトイレのドアではないか。三池がドアを開ける。爆音と閃光。もう一度開ける。水面が垂直になっている。ここは宇宙の外側で、長谷川の無意識と繋がっているのでは?再度開けると長谷川が入ってくる。
☆ちぎれた翼
長谷川はいなくなる。部屋には白い箱。オルゴールと長谷川からの手紙。彼女が手紙代筆の依頼にきた話。

<長谷川の回想>
彼女は高校時代、三池に片想いしていたが想いは伝えられなかった。吹奏楽部で彼を想って作った曲。余命半年と知り、歩いていた街で三池に再会。彼との生活は楽しかったが、似顔絵を見て自分が死ぬことを確信。彼を傷つけないよう姿を消した。そのことを彼女から聞かされ、長谷川は手紙を代筆した。

<ジャズクラブ33>
由利が三池に、妹の宛名のない手紙を渡す。涙を流す三池。

☆days

<病室>
ベッドには長谷川。上手に三池。カーテンの向こうから由利。あれは夢だったと話す3人。由利は大学に戻ると言う。三池は長谷川の似顔絵を描く。絵を見る長谷川「あぁ…これがぼくだよ」

☆Change Your Destiny

楽器を吹きながら登場。
Dahlia

何に戸惑ったのか

- この舞台を観ていない人にどのように説明したら良いか戸惑う。

ストーリー展開を出来る限り忠実に書き起こしたのには理由があって、話の中で三池と由利の2人も戸惑っているように、小説の再現シーンなのか事実の回想シーンなのか現在なのか、観ているうちにわけがわからなくなってくるのです。裸じゃない方の公演ポスターを「入れ子構造」と言っていたのが一番適当な表現かも。
キャストがトニ3人だけだから、教授や由利ママ、マダムなど色んな役を3人が演じ分けるのだけど、そちらの演じ分けはマーダーと違ってカツラや扮装によって歴然と別人として存在するから混乱することはない。難しいのは、小説と事実が違う、と言われるところ。例えば、街で似顔絵を描いている三池に長谷川が声をかけるシーンがあるけど、三池は長谷川には会ってないと言う。由利も大学で画家に研究の協力を依頼したことはあるが三池ではないと言う。えっ、さっきまで私たちが見てたアレは何だったの?という戸惑い。あと、回想や小説の再現シーンだと分かっていたつもりなのにいつしか現実との境目がわからなくなる感じにも、戸惑う。
ミステリの叙述トリックみたいなもので、映像作品にすると即バレするけど、小説や演劇だとその表現の曖昧さで騙すことができる。子どもの役を大人が演じることも、演劇だとよくある話。そうか、「叙述トリックみたいな作品」って言えば良かったのかな。でも観てない人にも観た人にも何のことやらわからない。

- 長谷川の「人格喪失症」に戸惑う。

物語の導入部にあるように、手紙で呼び出された3人が同じ曲を知っている謎を解き明かすストーリーです。ザックリ言うと、偶然高校時代から好きだった彼女の手紙の代筆をしたことで三池と彼女について知り、真実を伝えるために長谷川が呼び出したということだと思います。長谷川は人格喪失症になっており、自分の記憶はいつまで残っているかわからないから、三池と彼女の兄である由利とそして自分の3人を呼び出したのです。
長谷川の人格喪失症は、手紙代筆業で他人の代わりに文章を書くことで自分の存在がどんどん希薄になり発症した病です。
入院した長谷川の病室にあった小説「迷いの病の世迷言」は、長谷川が小説を書くきっかけとなった学生時代のエピソードから始まり、三池と由利の「現実」を予言していたかのような内容まで書かれています。長谷川は「自分のことはわからないのに、2人のことはよく知っている気がする」と話すとおり、小説の登場人物たちの記憶はあるようです。
とはいえ「自分が誰なのかわからなくなる」という症状は、わかるようでわかりません。例えば、ドラマの世界にのめりこみすぎて自分がその登場人物になったように錯覚する、みたいなことかもしれません。

これはあくまで仮定ですが、長谷川は彼女の手紙の代筆をするにあたって、彼女の記憶にシンクロしすぎてしまったのではないでしょうか。
2回目の観劇後に書いたエントリーでは「長谷川は彼女の人生を生きている」という表現をしたのだけれど、この「長谷川≒彼女」という設定の思い付きを、どんな言葉で説明すればいいのかわかりません。ただ、そう考えるのにはいくつか理由があります。

・高校時代からずっと好きだった人と偶然再会した
・重い病気にかかっている
・好きな人への手紙を書くが、宛名も書かず出せずにいた
・街で似顔絵を描いている三池の姿を見ている(三池は、長谷川には会っていないと言っている)
・高校卒業後、小説を書き続けていた長谷川と、音楽を続けていた彼女
・似顔絵を「人に描かされている」と言う三池が「自分から描きたくなる」のが彼女と長谷川
・長谷川が似顔絵を描いてもらっている時に「描いてもらうのは初めてじゃないよね。でもあれは僕じゃないか」と言う

「宛名のない手紙は我々の知らない方法で宛名の主に届く」という台詞があって、彼女の手紙は最後に三池に届くんだけど、長谷川が出せなかった彼女宛の手紙は届いたんだろうか、ということがどうにも気になっていました。
彼女に会った時に直接渡せたとは思えない。でも、長谷川の想いは何らかの形で届くべき人に届いていると良いのに。長谷川が彼女のために代筆した手紙には、長谷川の想いも入っているのかもしれない。手紙の中で、彼女が三池と出会った時に意識を失っていた設定にしたのも、長谷川のことが反映されているように感じました。
彼女から三池への「宛名のない手紙」の方も、長谷川からの手紙でもあるのではと解釈してしまいます。こちらは彼女が自分で書いた手紙のはずだけど、そのわりに病気や三池とのことなどが具体的に書かれていないのが少し引っかかりました。
「不幸だなんて決して思わないでください。これが運命だなんて決して思わないでください。」
再び夢に向かう三池と由利に対して、長谷川のラストは救いがないのでは、という感想を見たけれど、不幸だなんて思わないでって言うんだから幸せなのでしょう。だって名前も「幸彦」だし。

人格喪失症とは関係ないけど、この3人は「学年もクラスも違う」「三池と由利は隣のクラス」という発言があるから、三池・由利が3年、長谷川が2年、彼女(由利妹)が1年だったのかな。長谷川が小説家になりたい話を由利母が知ってるのは、由利から「親戚に小説家だか漫画家だかがいて出版社に持ち込みをした」と話を聞いたから、由利の店に話を聞きに行ったんじゃないかと想像しました。由利の店が自転車屋なのか八百屋なのか気になるところ。由利妹目当てで、長谷川は店に通ってたのかも。かわいい。

- 本人のエピソードがストーリーに反映されていることに戸惑う。

どこで読んだか忘れちゃったけど、この脚本はトニセンがG2さんに話したエピソードが盛り込まれているらしい。本人たちも驚いていたけれど、パッと分かるのはそんなになくて、ファンも知っているような昔のエピソードではなく、何の気なく雑談として話したことがシナリオに反映された、ということかもしれません。
そんな中で、これってもしかして…と思ったところをいくつか。まー担なので激しく偏っていて申し訳ない。
・パルコの占いコーナーに通うまーくんさん(イノも連れて行ってたはず)
・人格喪失症をウィキペディアで調べる。OMSでは、まーくんさんとピアノの羽毛田さんがお互いのことをウィキで調べてトークしていた。
・マダムもヤクザもめちゃくちゃ既視感がある(笑) ヤクザのセカンドバッグなんて、昔のマサ必須アイテムじゃないですか。
・強気な由利に言い返せない三池にもすごい既視感。HLHもHUDもこのキャラ設定だけど、一体どうして(笑)
・高校3年の終わりに転校するのは、その頃一度Jr.を辞めた長野くんのことかな。そもそも3人の出会いが高校で、学年が違うけど人数が少ないから顔見知りって、平家派Jr.時代のことかも。イノはもっと小さかったけど。
・由利に「今何やってるの?」と訊かれて「壁にペンキ塗ってる」と自嘲気味に言う三池、サラリーマン時代に電車でキンキに会って「今何やってるの?」って訊かれたまーくんさんじゃん…。
・長谷川が三池と話している時の「売れるってこんなに大変だったんだね」も身につまされる。高校時代にJr.として一緒に踊っていた3人だけど、まーくんさんと長野くんは途中で夢を諦めて別の道に進み、イノだけはJr.活動を続けていて、でもなかなかデビューは出来ず。キンキとの偶然の出会いがあったりで2人はまた戻ってきたけれど、やっぱりなかなかデビューは出来ず。イノはどんな想いで踊り続けていたんだろう。これも全く関係ないけど、キンキは辞める前のまーくんさんと接点がないから、まーくんさんのことは知らないはずじゃないかと思ってたけど、もしかしたら合宿所とかでビデオで見て知っていたのかもしれないね。イノとか太一くんとかの残ったメンバーが、辞めてしまった仲間のことを語ってきかせていたのかもしれない。

- ネタバレNGに戸惑う

三池が描いた彼女の似顔絵は「阿修羅像」で、彼女はそれを見て自分の死を悟るんだけど、阿修羅像と言えば三つの顔に六つの腕。(阿修羅とは-阿修羅像の魅力)ここにも「3」というキーワードが出てきます。
長谷川の似顔絵はどのようなものかわかりません。絵を見た由利は「お前、それじゃ…」と驚きますが、咎めるというよりも少し笑いを含んだ口調だった気がします。話しかけた由利を三池は「その先は言うな。言葉にするとこの絵は自由を失う」と制します。長谷川に見せる時にも客席には見えないようにしていますが、偶然見えた方によると白紙だったという話も聞きます。私は、彼女の絵が描かれていたのではないかと思いました。絵を見せられた長谷川の表情は、いつもの満面の笑みではなくて何かを悟ったような表情だったから、阿修羅像みたいと言えなくもありません。でもそれなら由利がもっと咎めそうな気がする。私の想像は何の根拠もない妄想だから、ここで何が描かれているかは演じる側としての正解はあるのでしょうが、それを観客に提示してしまうと、観客の解釈の自由を奪ってしまう。

開演前からネタバレ回避の空気感が激しかったけど、観た人が口々にネタバレ無しで観てって言ってたのは「3人にとっての大切な女性は同じ人だった」という謎解き部分で様々な伏線が回収されるアハ体験のためだと思ってます。それをSNSで語れないのは、いくらネタバレOKな私でも仕方ないなと納得です。でも、長谷川=彼女説はそれを踏まえて一歩踏み込んだ解釈だから、ますます言えない。実際私は、2回目に観た時に初めて思い付いたし、気付いてない人も、私とは違う解釈をしている人もきっといるはず。みんなの感想が聞きたい。でもオープンなSNSでは聞きづらい。

私は4回観たから、2回目の途中で気付いた解釈を3回目に確認しながら観ることができましたが、その解釈を知らなければ見逃すところもあるはず。だから、複数回入るのなら、次までに他の人たちと意見を出しあって、確認ポイントを整理しておくと有益な観劇ができる気がします。自分で言ってて意識高すぎるな。いつもはこんなこと考えてません。
でも、誰かに解釈してもらうよりは、自分で気付いた方が絶対に面白い。一つの解答例を知ってしまうと、その切り口でしか見えなくなってしまう恐れがあるから、解答例は見ずにまずは自分なりの解答を出してみた方が面白い。

2回目以降に見る時に戸惑うのは、自分の曖昧な記憶と目の前で再現されるお芝居との違いです。このシーンはどんな流れだっけ?このセリフはどんな表情だっけ?記憶が曖昧すぎて、見るたびに自分の勘違いに気付いてギャッ!と叫んでいました。物語の中で、自分たちの行動が小説に書かれていることに戸惑う2人ですが、実際脚本に書かれた通りに行動しているのです。「自分が小説の登場人物だなんて信じたくもない」というセリフがありますが、残念ながら登場人物なんです。お芝居を観るのは小説を読むのと同じ視点で、リピートするのは同じ本をもう一度読んでいるのと同じこと。私はミステリーのトリックも犯人すら忘れるトリ頭なので何度でも楽しめるけど、読んでるうちに思い出したり、前に気付かなかった伏線に気付いたり、そんなところも面白いです。

「戸惑いの惑星」をどんな風に観たのか、それは本当に人それぞれだと思うので、賛否両論色んな感想が聞きたいです。否定的な感想ってなかなか見つからないんだけど、キーポンが賛否両論だったんだから、これも絶対賛否両論に違いない。自分がなぜそんな感想を持ったかを言葉にしてみたら、きっと新たな発見があるはず。感想が何一つ出てこない現場は観なかったも同然だから、それは本当にお金がもったいないなぁ。