ナイツテイル 初見感想

7/27より帝劇で公演が始まった「ナイツテイル」、8/4に観に行きました。初見の感想を憶えている限りで記録しておきます。初見って一回しか体験できないから、2回目を観ると上書きされるのがもったいないよね!というもったいない根性のみです。覚書なのでネタバレありまくりだし、記憶も曖昧。戸惑いの惑星の時に初見感想を書いておいたら、記憶の間違いに気付けて大変有益でした。自分の記憶は信用ならない。

事前に持っていた情報

シェークスピアっぽいややこしさはそのままなので、わかりにくいかと思うが、そういう世界観だと受けいれて演じている」「牢に入ったアーサイトとパラモンがエミーリアに恋をする」「コメディ」「萌音ちゃんの役名が『牢番の娘』で名前が明らかになっていないのには理由がある」「騎士物語だけど馬は出てこず、人が馬の役をする」「衣装も騎士っぽくない」「ダンスミュージカルと謳っているがほとんどダンスはない」
こんなところでしょうか。プレビュー公演は7/25〜26で、それも含めると開演から1週間強ありましたが、ネタバレを含んだ感想は意識して避けなくてもそんなに流れて来ず、実際に観て「あのイラストレポで描かれていたシーンはこれか!」と紐付いたという程度です。私の持つ事前情報はほぼ全て公式(インタビューや個人連載など)から得たものです。

冒頭シーン

わかりにくいと聞いていたから身構えていたので、予想通りのわかりにくさでした。火を囲んでの演出で、その宗教的儀式っぽさから、なんとなく健くんが出た舞台「炎立つ」が連想されました。火で炎立つ…安易。でもなんかこんな感じのシーンがあったんですよ。たしか。
岸さん演じるシーシアスや歌穂さん演じるヒポリタが、アーサイトやパラモンとどういう関係なのか分からなくて、見ているうちに何となく把握できたかな、というレベルです。台詞はよくわからない。怖いメイク(?)の人が賢也さんに見えるけど、たしか賢也さんはダンスの先生役だったような…この人は何者なんだ…というのがわからないままでした。とりあえずそういうものとしてフワッと理解。ここまでは超シリアス。

牢に入れられた2人

アーサイトとパラモン、牢屋なのに仲良し2人で一緒の部屋だなんてすごい好待遇。顔の良い男2人がワチャワチャしてて、まるでジャニーズの合宿所みたい。あまりにも楽しそうで、拘束されている悲壮感なんて微塵も感じさせない。そりゃ牢番の娘も驚くわ。
部屋の窓から見た美しいエミーリアに心を奪われる2人。パラモンは「自分の方が先に見つけたんだから自分には好きになる権利がある。後から言い出したアーサイトには資格がない」という古参尊重&同担拒否のスタンス。対するアーサイトは同担OK(具体的な主張の内容は忘れた)。あるよね〜、よくあるよくある。これは揉める。
この2人はどこからどう見ても仲良しなんだけど、パラモンは理屈屋で神経質ぽくて、アーサイトの方が楽天的っぽい雰囲気があって、例えるならロザンみたい。身長差とか特に。
従兄弟なのにアーサイトだけ保釈金払って出してもらえるなんて、どんな親戚関係なんだよとツッコミたくなるが、まぁそれはそういう設定なので…
残されたパラモンの覚束なさがいい感じ。そりゃ娘に話しかけたくもなる。

エミーリアとフラヴィーナ

エミーリアにとって忘れられない存在なのが「フラヴィーナ」だということは台詞から聞き取れていたはずなのに、なぜか当たり前に男の子だと思い込んでいたので、1幕の最後だったか、牢番の娘=フラヴィーナと知って、そうだったのか!!と素直に驚いてしまいました。なぜだ。牢番の娘の名前が明かされていないことがポイントだということまで知っていたくせに。エミーリアがこーさまと芳雄くんを袖にしても執着するくらい美しい思い出を持つ相手はオトコに違いないという思い込みは、あらゆる認知を捻じ曲げる。
音月さんと萌音ちゃんとの身長差とルックスから、萌音ちゃんの方がずっと幼い=エミーリアとの思い出を共有するフラヴィーナであるわけがない、という思い込みもあった。
別にミスリードさせる表現があったわけでもないのに。あーー、めっちゃ悔しい。

シーシアスとヒポリタ

原作どころか「真夏の夜の夢」すらタイトルしか知らない人間なので最初はよくわかってなかったけど、ヒポリタはアマゾン国の女王なんですよね。シーシアスはアテネの公爵。アテネとの闘いに敗れて(?)、無理矢理連れて来られたとは言え、女王ヒポリタには「女だから仕方ない」という弱さはない。というか、女王制が採用される社会では、女が自立するのは当たり前なのではないだろうか。アテネ育ちのエミーリアとフラヴィーナは自分の頭で考えることができる賢い女だけど、ヒポリタがいなくてもこの強さが出せたか、出せたとしても男たちが聞いただろうか。

馬鹿な男と賢い女

シーシアスは、この環境の中ではまだマシだなと思うんですよ。ヒポリタのために結婚式に家族を招いてあげようとか、女性のこともちゃんと思いやれる人間。アーサイトとパラモンにしても、名誉のためには決闘するのが当たり前な環境だからこそ、それがいかに馬鹿げてるかなんて考えもしなかったわけで。
エミーリアが「私のために争わないで」と止めているのに「わかった、決闘で決めよう」と采配するシーシアス。わかってへんやん!(ズコー) しかしこの辺りのやりとり、流石にここまで食い違ってるとは思えないから、聞き違えてると信じたい。「オレのために喧嘩するのやめてくださーーーい」と叫ぶはるたんの姿が見えた。ここは天空不動産本社屋上か。(帝劇です)
賢也さんが踊りや芝居を見せる依頼を受けて「男と女の数は同じでないといけない」とこだわるところがあって、このような表現は新作ならではだなと感じました。

今回は、親友同士でも名誉のために命をかけて争ってしまう男の愚かさを描いていたけれど、このような「思い込み」って男女問わずあって、「女の子はピンクが好き」「恋愛対象は異性であるべき」「結婚して子供を産むのが幸せ」これ全部思い込みという呪いじゃないかという話を最近さんざんしている気がする。

W主演

こーさまと芳雄くんとがカーテンコールで並んで挨拶する姿を見て、ああ本当にW主演なんだな、と実感して感極まってしまいました。会見で言ってたけど「苦しいことは半分、喜びは2倍」という想いがこーさまの笑顔からダイレクトに伝わってきました。
ジャニーさんの「考えるな感じろ」的演出の舞台を20年間手探りでブラッシュアップしてきた人が、初めて外部舞台で演出を受ける立場になって、怖い気持ちが大きいというのは正直な言葉だったろう。でも、その恐怖を乗り越えられたのは、世界初演の作品に取り組むためにこーさまのみならず全員が手探り状態だったことと、カンパニーを引っ張るのが自分一人じゃないという心強さもあったと思うのです。もともと困難に立ち向かうのは好きだもんね!ドMだから!
こーさまには、もっともっとミュージカルが好きだって話をオープンにして欲しいよ!好きなんでしょ?知ってるよ!だって私もミュージカル好きだもん。


全然まとまってないけど、とりあえず初見の感想として書き残しておきます。あとで推敲しよう。

追記/男たちは考えを改めたのか

こーさまが初めて外部舞台に出ることが出来たという点を差し引いての全体的な感想としては、分かりにくい描写や短絡的な結末という減点ポイントはあるものの、シェークスピアを題材に現代の男女問題を取り込んだ点は画期的だし、新作として上演されるに相応しい内容だったように感じたので、個人的には好評価でした。

ナイツテイルを観たお友達と話していて気付いたのだけど、私はミュージカルのストーリーに求めるハードルが低いのかもしれない。主に東宝ミュだけど「話は全然納得いかないが、曲は好き」な作品、めっちゃある。「この男たちは名誉にとらわれてて馬鹿なんだけど、アーサイトの顔はいい」なエミーリアの気持ちがよく分かる。曲がよかったり顔がよかったりするからといって全部許すわけじゃないぞ。しかし曲も顔もいいんだ。それは仕方ない。
ミュージカルはストレートプレイより喜怒哀楽のコントラストが激しくて、なんでこれだけのエピソードで恋に落ちる??とか、そこまで怒ること?ちょっと冷静になれよ!な展開ってよくありませんか?私はある。役者さんたちも演技で自然に見えるようにカバーしてくれてるし、楽曲の気持ちよさに引きずられてどうでもよくなることは多々あるけど、いやでもやっぱりよく考えたら不自然じゃない??
あと、名作と呼ばれるものは昔の倫理観で作られた作品だったり史実に忠実だったりで、女の立場がめちゃくちゃ低くても当たり前な世界が多くて、時代背景考えたらそうなんだけどさぁ、とモヤモヤしてしまうのです。
だから、ミュージカル「にしては」自立した女が述べる意見を男が聞いてくれるだけでも画期的、という低いハードルでの評価になってしまうんですね。

で、女の意見を聞いた男たちが考えを改めたのかというと、それはどうなのかなーというのが私の解釈です。「決闘を自分でやめられただけでも偉かったねー」というメンタリティなので、それ以上は求めてなくてちゃんと観察できてなかっただけなのかもしれないけど。あの2人、なんで決闘をやめたいという心境になったのか自分でも分かってない気がする。腹落ちしてないと理屈で判断できないから、また同じ過ちを繰り返すって私も上司に言われた。ムカつくけどわかる。

あの人たちの良いところは「男だから/女だからこうあるべき」と言わないところなので、フィクションは優しいなと思う次第です。現実は厳しい。