Oslo(オスロ)

主に現場に関する記録を書き残している当ブログですが、コロナ禍で「現場とは何か」という命題にぶち当たったまま、1年以上が過ぎてしまいました。
2020年以降は配信で観る機会が圧倒的に増えています。2020年の現場振り返りも書けていません。会場に足を運んだ経験だけを記録してもあまり意味がない気がして、かと言って家で配信で観たものは気合の入り具合に濃淡が大きすぎる。
そんなわけで、今まで以上に何をどう書くかは悩ましくなる気はしますが、これまで同様ルールは定めず、書きたいことだけ書きたいように書きます。

なお、検索でこちらのブログに辿り着かれた方に先にお伝えすると、当ブログの特徴として、作品の感想はまともに書かない(書けない)のでご了承ください。

screenonline.jp
舞台「Oslo」を観たよ!という話を書きます。公式サイトがもう閉鎖してしまった…悲しみ…。
坂本昌行安蘭けい福士誠治」という主要キャストの名前を見て、ミュージカルと思い込んだ人も少なくなかったですよね。ご本人たちも仰ってました(笑)
最近めっきりヅカオタっぽくなっている私ですが、安蘭けいさん(とうこさん)*1のことは以前から好きで、いつかまーくんさんと共演していただきたい!と願っていたのでした。宝塚の現役時代はリアルには拝見していなくて、退団後の梅芸版「スカーレット・ピンパーネル」が多分初見。あと、MonSTARSコンにゲスト出演されていました。カズさんとお似合いすぎて地団駄踏んだ。pritznn.hatenablog.com
念願のとうこさんとの共演、しかも夫婦役。できればミュージカルが良かったけどわがままは言わない。ありがたやありがたや(拝)
福士誠治さんは舞台でもTVでもご活躍ですが、生で舞台を見たことはありませんでした。「スリル・ミー」の成河さんとのペアを、2019年に観る予定だったのですが、インフルエンザで観れず(くっ…)今年リベンジ予定でしたが、大阪公演は緊急事態宣言のために中止になってしまいました(くっ…!!)
公演の公式ビジュアルでは福士さんは眼鏡インテリ風だったので、舞台上のひげパーマの人と結びつかなくて困惑された方もいるのでは。

私が観たのは3月の兵庫公演です。2020年は軒並み公演中止になった舞台演劇界ですが、2021年2~3月頃は「出演者・スタッフにコロナ陽性者が出なければ上演できる」流れになってきていて、もちろん無事に上演されるかの緊張感はあるし、コロナもまだ全然落ち着いていないんだけど、現場が戻りつつある感じはありました。2021年4月末に発出された緊急事態宣言では、また演劇現場が制限対象になりましたが…。
いつもの私なら、2月の東京公演を1回くらいは観て、3月の兵庫公演(地元)を1~2回、友人にそそのかされたら福岡も、愛知のオーラスは日曜だし取れれば行きたいな、くらいの勢いでチケットを確保しますが、このご時世だし本命のミュージカルじゃないし地元で1回観れたら十分か…という心持ちでした。なんにせよ、無事に上演されないと行けませんし、私自身も健康じゃないと行けません。行ければラッキーです。実際、東京公演の次の宮城公演は、コロナではなく地震で劇場が損壊したために中止となりました。
基本的にネガティブな性格なので「(何らかの理由で)行けない気がするなー」とは思っていましたが、コロナでも地震でもインフルエンザでもない理由で本当に観劇が危ぶまれる事態となりました。

それは、右手首の骨折です*2

骨折したのは2/24、プレート固定手術が3/1でした。手術後の入院も1泊でしたし、患部が手首なので普通に歩いて劇場に行くのは支障ないのですが、観劇日が3/6だったため、果たして観劇中骨折の痛みに耐えられるのか、Twitterで骨折したことを報告していたので劇場に右手首ギブス姿だと身バレするのでは(自意識過剰)などと不安になり、こんな不安をおしてまで現場に行かなあかんか??と自問自答を繰り返していました。
しかし、せっかくの自担現場。コロナ禍以降すべての現場観劇を諦めていたかと言うと、宝塚だけは数回行っており、まーくんさんより宝塚の方がプライオリティが高いのかよ私(それだけの問題ではないが)、とうこさんと結婚するまーくんさんが観られるんだよ?!と、勇気を振り絞って劇場に行くことにしました。
3/6の時点で既に手首の分厚いギブスが取れ、包帯だけになっていたので、長袖で隠せば見た目はほぼ気にならなくなっていたのも、背中を押してくれました。ありがとう、医療技術の進歩。痛み止めは飲みました。

さて、Osloについて。
題材の「オスロ合意」は1993年の出来事ですが、当時の私は世界史が大の苦手な高校生で、現在に至るまで完全に世界情勢に疎いため、恥ずかしながら名前を聞いた記憶もありませんでした。そもそもイスラエルパレスチナはよくニュースで聞く名前だけど、何が起こっているのかも全然わかっていなかった。トニー賞授賞式で「Oslo」の名前を見た記憶はあったものの、それがどんな作品なのかも知らなかった。
前提知識が乏しすぎて、ストーリーが理解できるかめちゃくちゃ不安ではありましたが(1回しか観ないし)、出演陣がこぞって「会話劇だから大丈夫」って言ってくれていたし、直前に「プレミアの巣窟」でパックンが解説してくれたので助かりました。ありがとう、TVer。(関東ローカルなので今までは観られなかった)

史実、しかも主人公のテリエ本人が作者のJ.T.ロジャースに話したエピソードを舞台作品として脚色したものということで、現在進行形で日々報道されている軍事衝突と地続きなのだと考えると震えます。フィクションなら、ハッピーエンドかバッドエンドか、とにかく終わりがあるものですが、この話は終わっていない。「合意」という当初の目標は達成できたけれど、それが正解だったのかもわからない。
善人と悪人がいて、悪人をやっつけたら万事解決、という問題ではない。各々に正義があり、守りたいものがある。
作品の中でも、イスラエルPLO(パレスチナ解放機構)は対話への姿勢の違いはあるものの、どちらかを悪人として描いているわけではありません。

ノルウェー人のテリエとモナが完全に中立な立場としてイスラエルPLOの面会をセッティングし、両者が本音ベースで落としどころを探っていきます。テリエ自身は話し合いには加わりませんし、何らかの結論に誘導することもありません。何をするかというと、両者が腹を割って話し合えるよう、食事と酒を提供し、場を和ませること。話し合いがまとまらず怒りながら話し合いの部屋から出てきた彼らも、酒を酌み交わして大笑いする。
「飲みニケーション」という言葉が昔からあるように、飲み会をすることで打ち解けるということはよくある話です。私自身、アルコールには強くないものの、飲み会にはフットワーク軽く参加する側の人間でした。職場で仕事の話だけをするよりは、もっとフランクな関係性を持ちたいと思うタイプです。ですので、テリエの計画が成功したのも理解できます。
しかし近年、問題となっているのが「会食政治」です。政治家というのは会食を通じて様々な人たちと意見交換をしているらしく(?)政治活動には無くてはならないもののようです(??)。コロナ禍になっても会食が止められない政治家たちの姿が、TVで幾度となく報道されてきました。この1年間で「会食=悪」という刷り込みをされている身としては、もちろんOsloの時代はコロナ禍前であるとは言え、やっぱり会食しなきゃいけないものなの??と感じずにはいられませんでした。
テリエの妻のモナは外交官で、バリバリ仕事をしている聡明な女性です。イスラエルPLOの面々はモナのことをとても気に入っているため、「えー、モナに会いたいよぉ~。早く来てよぉ~~」というノリなのですが、それが喜ばしいことなのかどうかも戸惑ってしまいます。男性たちは会食の場に女性を呼びたがる習性(?)がある、ということも、この1年でいくつかの事例から学びました。
Osloは現代日本の話ではないので、今の私の感覚で受け止めるのはナンセンスな気もしますが、これまでなら特に違和感なく受け入れられた風景がこんなに引っかかるものになるとは、という驚きがありました。

共演者には、A.B.C-Zの河合くんがいました。まーくんさんは舞台で後輩と共演することがあまりありませんでした。私が最初に見たのは「ネバゴナダンス」で、すばるくんが一緒でした。その後は風間くんと「アリバイのない天使」で共演したくらい。それからも長らくありませんでしたが、「TOP HAT」で屋良くんと共演し、公演中止になったものの「THE BOY FROM OZ」でも寺西くんと共演予定でした。なかなか後輩と絡むことのなかったまーくんさんが、デビュー20周年を過ぎてようやく後輩と共演する流れになってきました。逆に今まで少なすぎた気もします。
河合くんのお芝居をきちんと観たことはこれまで無かったのですが、きっと器用に出来るだろうと思っていましたし、錚々たる諸先輩方に囲まれながらも期待以上に二役を演じられたと思います。声と表情が良いので全て良し!

とうこさん!念願のとうこさん!!(興奮)
理想のモナ役だったし、高いヒールでまーくんさんと並んでも若干まーくんさんの方が高いのが意外でした。(しかもとうこさんは膝を曲げていない!)*3
お芝居の中で何の流れだったか忘れたけど、テリエとモナが「タンゴの練習をしていたんだよ」みたいな冗談を言うところがあって、個人的に最近タンゴがブームなので、劇場の中で1人大興奮でした。やっぱりまーくんさんととうこさんのミュージカルを諦めきれない!その折には是非タンゴを!!

終演し、カーテンコールで拍手を送ろうとして気付きました。
手首が折れているために、両手を叩いて音を出すことができないのです。
無観客配信ライブを観ていて最もつらかったのは、観客席から拍手の音が聞こえるはずのタイミングで無音だったことでした。確かに感染リスクを考えると、外出することも多くの人が集まることも避けるべきなのは理解できます。ライブ映像に客席のオタクを映り込ませないでくれ、オタクの姿なんか見たくないんや、と言ったことも一度ならずあります。しかし、やはり客席に観客がいてこそ成立するのが生の演劇やライブであるし、観客の視線、息づかい、拍手の音も作品の一部なのだと実感しました。
それなのに、せっかく劇場にいるというのに、拍手で作品に参加することができないなんて。
猛烈な無力感に襲われながらも、とりあえず拍手の音は他のお客様が出してくださっているので、私は音を出さずに、拍手の動きだけ舞台に向けて送りました。満足した笑顔も送りたかったのですが、口元はマスクで隠れてしまうので、出来る限り顔を上げて、気持ちが伝わるようにと頑張りました。

解散発表は、私がOsloを兵庫で観た後のことでした。個人仕事とV6は切り離して考えるべきとは言え、解散のことを知ってすぐに生でメンバーの姿を観るのは、ファンにとっては辛いものでしょう。Osloは発表の直後に福岡公演があり、やはりカーテンコールでまーくんさんがコメントする流れとなってしまったそうなので、それは辛かろう…と胸を痛めました。
発表当時、まーくんさんと健くんは舞台期間中だったので、せめて2人の舞台が終わるまで待てなかったのか?!と胸ぐら掴みたい気持ちも山々でしたが、シングルリリースの準備も控えていて、ギリギリのタイミングだったのかもしれません。いや、でもさぁ…。

*1:「とうこ」は宝塚在団時からの愛称です。ちなみに、とうこさんは77期生で、同期には春野寿美礼さん、朝海ひかるさん、花總まりさんがいらっしゃいます。

*2:骨折についてもいろいろ面白いこと(面白い?)があり、骨折ブログを書いてもいいくらいなのですが、個人情報を多く含んでしまうため、いつかオフラインで。

*3:宝塚男役さんは長身なので、ジャニーズタレントより高い場合もあり、男性より低く見せるための娘役技として、スカートの中で膝を折るのである。